招き猫の右手と左手は、一般に「お金を招く」「人やお客を招く」と説明されます。ただし、寺社ごとの意味まで同じとは限りません。9月29日の招き猫の日をきっかけに、左右の見分け方と豪徳寺の例を知り、店先や展示で出会う猫の姿を一歩深く楽しんでみませんか。
この記事で分かること
- 見る人の左右と、猫自身の左右を取り違えない方法
- 一般的な意味と、豪徳寺の招福猫児の教えの違い
- 手・持ち物・解説を合わせて読む、招き猫の鑑賞の仕方
招き猫の右手と左手は、猫自身を基準に見る
手を挙げて座る姿は似ていても、招き猫には右手を挙げるものと左手を挙げるものがあります。日本招猫倶楽部の「招き猫Q&A」では、一般的に右手はお金、左手は人やお客を招くと紹介されています。ここで大切なのは、猫自身の右と左で読むことです。
正面から向き合うと、左右は自分と逆になる
猫の顔を正面から見て、こちらの左側の手が上がっていたら、それは猫の右手です。こちらの右側が上がっていたら、猫の左手になります。友人と向かい合ったとき、相手の右手が自分の左側に見えるのと同じですね。
| 正面から見た位置 | 猫が挙げている手 | 一般的な意味 |
|---|---|---|
| 見る人の左側 | 猫の右手 | お金を招く |
| 見る人の右側 | 猫の左手 | 人やお客を招く |
この表は、左右反転していない正面像を前提にしています。斜めからの写真で迷ったら、まず鼻と胸の位置を探し、猫がどちらを向いているかを確かめましょう。写真が反転しているか分からない場合は、写っている側だけで断定しないほうが確実です。
例えば、正面から見て左側の手を挙げた猫を「左手だから人招き」と説明してしまうのは、見る人を基準にした取り違えです。「猫の右手が上がっている」と言い直せれば、見分け方の答え合わせができます。
9月29日は、招き猫に目を向ける「来る福」の日
日本招猫倶楽部の公式案内によると、9月29日は「来る福(くるふく)」にちなむ招き猫の日です。同倶楽部が1995年に制定しました。いつも福を招く姿をしている猫に、感謝する日を設けようという思いが込められています。
秋の街歩きで招き猫を見かけたら、いつもの「かわいい」という印象に、挙げた手の観察を一つ足してみるのも楽しみ方です。記念日を知ることは、普段なら通り過ぎてしまう小さな置物へ目を向けるきっかけになります。
なお、記念日と催しの開催日は別です。招き猫の日だから全国の催しが必ず9月29日に行われる、と考えることはできません。本稿は文化の見方を扱い、特定の祭りや施設への当日の訪問案内にはしていません。
右手を挙げていても、小判を持たない猫がいる
一般的な意味を覚えたところで、もう一つ見てみたいのが、東京・世田谷の豪徳寺の猫です。寺では招福猫児(まねきねこ)と呼ばれ、右手を挙げていますが、小判は持っていません。
豪徳寺では、人との縁を生かすことが大切にされる
豪徳寺公式「豪徳寺と招福猫児」は、猫が人を招いて縁をもたらしても、その縁を生かすのは本人だと説明しています。受けた恩に感謝する教えと、小判を持たない姿が結び付いているのです。
つまり、この猫を見て「右手だから、お金を増やしてくれるもの」とだけ読むと、寺が伝えたい意味を取りこぼします。一般的な分類を入り口にしつつ、その場所の説明へ進むことが大切なのですね。
由来の物語は、寺に伝わる話として味わう
豪徳寺は、猫に招かれて立ち寄った井伊直孝が、雷雨を避け、和尚との話を楽しんだという物語も紹介しています。猫との出会いが幸運につながったとする、寺に伝わる話です。この物語だけで、すべての招き猫の発祥を一つに確定することはできません。

手の向きだけでなく、姿と解説を一緒に楽しむ
招き猫を眺めるときは、意味を暗記するだけでなく、形にも目を向けてみましょう。同じ手を挙げていても、顔立ち、胴の細さ、身に着けたものによって印象が変わります。こうした違いは、見比べる楽しさにつながります。
前垂れや体つきから、産地の話へ進む
日本招猫倶楽部の招き猫ミュージアム解説では、愛知県瀬戸市と招き猫作りの関わりを紹介しています。「古瀬戸タイプ」と呼ばれる、細身で前垂れを着けた姿も取り上げられています。丸くふっくらした猫だけを思い浮かべていると、新鮮に感じるかもしれません。
前垂れは胸元を覆う部分です。見つけたら、色や模様だけでなく、首から胸へどう沿っているかを眺めてみてください。ただし、形だけで産地を確定しないことも大切です。展示名や作者、制作地の説明があれば、見た目の印象と照らし合わせます。
陶磁器の表情をもっと見てみたい方には、萩焼の七化けと器の見方の記事もあります。招き猫の意味とは別の視点で、土や釉薬、形に注目する楽しさを紹介しています。
「見えたこと」と「意味」を分けると迷いにくい
例えば、白い猫が右手を挙げ、小判を持っていない写真があったとします。そこから読み取れるのは、まず色・姿勢・持ち物です。その写真の説明がないまま「豪徳寺の猫だ」「この教えを表している」と結び付けるのは早すぎます。
反対に、施設の公式解説で名前や由来が確認できれば、見た目に物語を重ねられます。外見は観察し、意味は説明と照合する。この順番なら、一般的な説明と個別の教えが違っても、どちらかを誤りと決めつけずに読めます。
縁起の意味として楽しむ
「お金を招く」「福を招く」は、招き猫に託されてきた願いや文化的な意味です。置けば収入や運勢が変わると実証された効果を述べているわけではありません。この記事では、形と背景を知る鑑賞の手掛かりとして紹介しています。
次に出会う一体を、三つの問いで見てみよう
招き猫を見るために、新しく置物を買う必要はありません。まずは、この記事で紹介した公式ページの写真を一枚選び、次の順に確かめてみてください。実物を見る場合も、展示に触れずにできる観察です。
- どちらの手?:猫自身の右・左で言葉にします。
- 何を身に着けている?:小判や前垂れなど、見えるものを確認します。
- どんな説明がある?:寺社や展示の解説を読み、一般的な意味との違いを一つ探します。
読み終えたら、「右手を挙げている。小判はない。この寺では人との縁について説明している」のように、観察と解説を分けて短く言えれば十分です。出典にない意味を足さず、一体について自分の言葉で説明することを目標にしてみましょう。
土地ごとの信仰や物語に関心が広がったら、出雲大社の縁結びと神話の記事へ。招き猫と同じ由来という意味ではなく、その土地の言葉から文化を知る次の読み物として紹介します。
情報確認日:2026年9月27日。掲載画像はAI生成の文化イメージで、実在の展示室・授与品・販売商品を再現した写真ではありません。背景の秋の装飾も、特定の場所の当日の景観を示すものではありません。



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