和本の袋綴じは、文字のある面を外にして紙を二つ折りにし、折り目と反対側を綴じる仕組みです。読む面は外にあるため、折り目を切る必要はありません。秋の読書のひと休みに、紙一枚で向きを確かめてみませんか。「一丁」の数え方や、四つ目綴じとの違いも整理します。
この記事で分かること
- 袋綴じの折り目を切らずに読める理由
- コピー用紙一枚で、綴じる側と読む面を確かめる方法
- 袋綴じ・四つ目綴じ・一丁という言葉の使い分け
和本の袋綴じは、どこが「袋」になっている?
古い本のページが二重になっていると、内側を開くのだろうかと迷うかもしれません。袋綴じを理解する鍵は、折った紙の内側と、読者が読む面を分けることです。閉じているところが、そのまま読むための入口とは限りません。
文字の面を外へ向けて折る
国立国会図書館の電子展示「古典籍のつくり」では、袋綴じについて、文字のある面を外にして紙を重ね、紙縒や糸で綴じる構造を紹介しています。紙縒は、紙を細くより合わせたものです。書かれた面が外に出るので、折った一枚をめくると、その反対側も読めます。
紙を折った内側には空間ができますが、そこを広げながら読む構造ではありません。「二枚のページが貼り付いていて読めない」と考えるより、一枚の紙を二重にして一つの単位にしていると捉えると分かりやすくなります。
綴じるのは、折り目と反対の側
国文学研究資料館「和書の装訂」は、袋綴じを、二つ折りの紙を重ねて折り目と反対側を綴じるものと説明しています。閉じた本を正面から見た時、右側を綴じる例なら、紙の折り目は左側に来ます。
この向きを逆に覚えると、糸のある側と折り目の関係が分からなくなります。最初は本の上下や装飾を気にせず、紙の「折れた端」と「二枚に分かれた端」の二か所だけを探しましょう。袋綴じでは、後者をまとめて綴じます。
折り目は、製本後もその形で残る部分です。和本の袋綴じを読むために、刃物で開封する必要はありません。古い資料を手元で確かめる代わりに、次の練習を新しい紙で行うと、形を変えずに残す理由を実感しやすくなります。
紙一枚で、切らずに読める仕組みを確かめよう
用意するのは、新しいコピー用紙一枚と鉛筆だけです。ここでは製本を完成させず、折り方と読む面の関係だけを試します。針や糸、はさみ、のりは使わず、紙を指で支えて確認します。
丸と三角を、紙の同じ面に書く
以下は構造を理解するための練習例です。実際の古典籍の版面や文字の配置を再現するものではありません。紙の表裏を取り違えないよう、最初に印を付ける面を一つに決めます。
- 印を付ける:紙を横長に置き、上を向いている面の左半分に丸、右半分に三角を大きく書きます。反対の面は白紙のままにします。
- 印を外にして半分に折る:左右の短い辺を合わせ、丸と三角が内側に隠れない向きに折ります。
- 二つの端を探す:折り目を左、紙の二枚の端が重なる側を右に向けます。右端を指で軽くつまみ、綴じる側に見立てます。
- 読む面を確かめる:折った形を保って表裏を返し、丸と三角がそれぞれ外側から見えることを確認します。
答え合わせは、折り目を開かずに両方の印が見えるかです。一枚の紙に書いた二つの印が、折った後は表と裏の二面に分かれます。内側へ手を入れたり、折り目を切ったりしなくても、読む面にたどり着けます。
印が隠れたら、折る向きを戻す
丸も三角も見えなくなった場合は、印のある面を内側に折った可能性があります。練習用紙をいったん開き、何も書いていない面どうしが内側で向き合うように折り直してください。外側の二面に一つずつ印が出れば、この練習の向きになっています。
片方しか見えない時は、折ったまま表裏を返したかを確かめます。折り目から紙を開いて印を探すと、読書の動きと製本前の紙の状態が混ざってしまいます。「紙を広げる」と「折った単位をめくる」を区別するのが、この練習の要点です。

掲載画像はAI生成のイメージです。実在の古典籍や製本作業の記録ではなく、正確な綴じ順を示す図でもありません。紙の向きは本文の練習と公式解説を手掛かりに確認してください。
「一丁」は何ページ?見開きとの違いを知る
紙の折り方が分かると、和本の説明に出てくる「丁」という単位にもつながります。一丁の表と裏で二ページ分と考えるのが入口です。本を開いた時の左右一組とは、必ずしも同じではありません。
一丁表、一丁裏と順に読む
早稲田大学が公開する「資料の各部分の名称」の解説(PDF)では、表裏二ページ分を一丁とし、「一丁表」「一丁裏」を「一オ」「一ウ」と略す表記を紹介しています。表を「おもて」、裏を「うら」と読むことが、略し方の手掛かりになります。
先ほどの練習用紙を一丁に見立てれば、外側の二面が表と裏に当たります。さらにもう一枚を同じように折り、折り目の向きをそろえて重ねる想定では、一丁表、一丁裏、二丁表、二丁裏という順番になります。紙の枚数と、読める面の数を別々に追ってみましょう。
例えば、表紙や白紙などを含めず、本文だけが十丁ある単純な練習例なら、表裏で二十ページ分です。これは数え方を理解するための計算であり、実際の本の目録にある丁数へ一律に二を掛ければ、画像の総数まで分かるという意味ではありません。
見開きは、隣り合う丁にまたがる
右綴じの本を途中で開いた想定では、右に一丁裏、左に二丁表が見える組み合わせになります。目の前に二面が並んでも、それらは同じ紙の表裏ではありません。この違いを知ると、「一丁だから一つの見開き」という思い込みを避けられます。
| 言葉 | 何を指す? | 練習での確かめ方 |
|---|---|---|
| 一丁 | 表裏二面の単位 | 折った一枚を表裏で見る |
| 一丁表・一丁裏 | 同じ丁の各面 | めくる前後を対応させる |
| 見開き | 開いた時に並ぶ左右の面 | 隣の丁との境目を見る |
デジタル画像で迷ったら、画面の画像番号と、資料に書かれた丁の表示を別の欄にメモします。撮影単位や表紙の画像を含むかどうかで、数字の対応が変わり得るためです。まず一か所だけ対応を確かめ、未確認の後続画像まで同じ計算で決めないようにします。
袋綴じと四つ目綴じは、同じ名前なの?
二つの言葉は、一冊の本を説明する時に一緒に使われますが、注目している点が違います。袋綴じは紙の折り方とまとめ方、四つ目綴じは綴じ穴と糸の通し方に関わる呼び名です。
国文学研究資料館の装訂解説では、四つ目綴じを右端の四か所に穴を開けて糸を通す方法と説明しています。袋綴じによく使われる一方、ほかの紙のまとめ方にも見られます。したがって、四つの穴だけを見て、内部の紙も必ず袋綴じだと決めることはできません。
展示の説明に両方の名前があれば、紙の構造と綴じ方という二つの情報が書かれている、と読めば十分です。すべての和本を袋綴じと呼ぶのも避けましょう。巻物や、蛇腹のように折り畳む折本など、紙の使い方が異なる形もあります。
展示では、背と小口を先に区別する
国文学研究資料館「和書の部位」では、背や小口などの名称を図とともに確認できます。まず綴じている側の背を探し、その反対側に紙の折れた端があるかを見ると、袋綴じの説明と形を結び付けやすくなります。
同資料は、袋綴じ本では版心が丁の折り目になることも説明しています。版心とは、一丁分の版の中央に当たる部分です。紙を広げた時の中央と、折って本にした時の端では位置が変わるので、「中央」という言葉だけから見開きの中央を探さないことがポイントです。
ただし、正面の写真だけでは糸や紙の端が写らない場合があります。その時は別角度の画像か装訂の記載を確認し、見えない折り目を推測で描き足さないようにします。展示ケース越しなら、見る位置を変えられる範囲で確かめ、資料を触って調べることは前提にしません。
内側が気になっても、白紙とは決めない
練習では片面を白紙にしましたが、実物の紙の内側も必ず白紙とは限りません。早稲田大学の資料では、使用済みの紙の裏を利用した時に、先に書かれた文書が残る「紙背文書」も説明されています。新しい紙の模型で理解できることと、個々の古い資料の状態は分けて考えます。
透けて見える文字があっても、自分で折り目を切って調べる理由にはしないでください。資料名と気になった位置を控え、所蔵先の解説や担当者への相談につなげます。構造を知ることは、残された形の意味を考える入口にもなります。
新しい紙で、折り目と読む面を説明してみよう
和本の袋綴じは、閉じた内側を切り開いて読む仕掛けではありません。文字の面を外に向けて折り、二つ折りの単位をめくって読む仕組みです。折り目、綴じる側、一丁の表裏を分けて考えると、昔の本の説明が少し読みやすくなります。
次の一歩は、丸と三角を書いた新しい紙を一枚折ることです。外側の二面を見せながら「こちらが読む面、ここは切らずに残る折り目」と説明できれば、構造をつかめています。古い本を開封したり綴じ直したりせず、まず身近な紙から確かめてみてください。



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