讃岐かがり手まりの模様は、丸い土台に目印の線を設け、糸を規則的にかがって作ります。その目印が「地割り」です。木綿の球に花や幾何学模様が整う理由を、素材と工程からたどります。写真や展示で何を見ればよいか迷う方へ、色・線・立体感を順に見る方法も紹介します。
この記事で分かること
- 土台を包む糸と、模様を作る糸の役割の違い
- 丸い面で位置を決める「地割り」の考え方
- 写真や展示で、配色と糸の重なりを見比べる手順
讃岐かがり手まりは、何でできている?
香川に伝わる讃岐かがり手まりは、木綿糸と草木染めが特徴です。華やかな表面だけでなく、その下にある丸い土台にも手仕事が重なります。まず芯・地巻き・かがりという三つの役割に分けると、工程を追いやすくなります。
芯を包み、細い糸で丸さを整える
三豊市の讃岐かがり手まりの紹介では、もみ殻を紙で包み、木綿糸を巻いて土台を作ると説明されています。模様を縫う前から、球の形を手で整える仕事があるのです。
ここで注目したいのは、完成品では見えにくい下地の丸さです。例えば、球の輪郭だけを眺めてから模様に目を戻すと、花の形を支える面があることに気づけます。外側の色糸だけで球全体を作っている、と考えないことが理解の入口になります。
同じ木綿でも、糸の役目は二つある
香川県「かがわもの」の製造工程では、細い地巻き糸と、模様を作る太めのかがり糸が紹介されています。前者は土台を包み、後者は表面の意匠を担います。太さの違いを知ると、工程写真に写る糸の束も読み取りやすくなります。
見分ける際は、白い糸だから下地、色があるから飾り、と色だけで決めないでください。見るのはどこに、何のために使っているかです。球全体を覆う段階なのか、形のある模様を置く段階なのかを、写真の前後関係と説明で確かめます。
なぜ曲面に整った模様を描けるの?
球の上では、平らな紙のように縦横の位置を見渡せません。そこで模様をかがるための目印を設けます。この球面を区分する作業が地割りで、糸を置く位置のよりどころになります。
地球儀の北極・南極・赤道を思い浮かべる
県の製造工程は、地割りを地球の極や赤道に例えています。紙の物差しなどを使い、球の上に基準を取っていく工程です。分割の数は作りたい模様によって異なるため、すべての手まりが同じ本数の線からできるわけではありません。
理解のための想定例として、頭の中に線のない地球儀を思い浮かべてみてください。そこへ両極と赤道を加えると、「上の方」だけでなく、赤道からどれほど離れた場所かを意識できます。手まりでも、目印があることで糸をかける位置の関係を捉えやすくなる、と考えると身近です。
ただし、この例は仕組みをつかむためのものです。地球儀の線をそのまま写せば特定の花が作れる、という作図手順ではありません。実際に作る場合は、選んだ模様に対応した地割りと糸の進め方を一組として学ぶ必要があります。
目印に沿って糸を重ね、面を育てる
地割りの後は、目印を頼りに糸をかがって模様を作ります。県の説明では、糸を強く引き過ぎずに進めることや、重ねることで立体的な模様になることも示されています。細い線が集まって色の面になるところが、完成品を見る際の大切なポイントです。
例えば花びらに見える一部分を選ぶと、輪郭だけでなく内側にも糸の向きがあります。線がどこで折り返しているように見えるか、隣の色とどこで接しているかを追ってみましょう。模様を「花」というまとまりで見る時と、糸の集まりとして見る時では、目に入る情報が変わります。

掲載画像はAI生成のイメージです。実在の工房・作品の写真や、正確な縫い順を示す図ではありません。工程の確認には本文で紹介する公式資料をお使いください。
草木染めの色は、何を見ると楽しめる?
形の仕組みが分かったら、次は色の組み合わせに目を向けます。ひとつの色名を当てるよりも、隣り合う色がどう見えるかを比べると、写真でも始めやすい鑑賞になります。
素材の歴史と、目の前の色を分けて考える
讃岐かがり手まり保存会の解説は、讃岐の木綿作りの背景と、植物で染めた糸を使う手まりの特徴を紹介しています。染料の例には藍や茜などが挙げられています。地域の素材を使う文化が、手のひらほどの球に結び付いているのです。
ただし、写真の青を見て「これは藍」、赤を見て「これは茜」と決めることはできません。作品ごとの材料情報と、見る側が受ける色の印象は別です。染料を知りたい時は作品説明を確認し、説明がなければ色の呼び方にとどめると、鑑賞と事実を混同せずに済みます。
秋らしさは、配色から自由に感じてよい
秋に眺める想定例なら、深い青にえんじ色と生成りを添えた組み合わせを考えてみましょう。えんじ色から実りや紅葉を連想する人もいるでしょうし、青の静けさに目が向く人もいるでしょう。これは鑑賞の一例であり、その配色に伝統的な秋の意味が定められている、という説明ではありません。
香川県の作り手・荒木永子さんへの紹介記事では、同じ模様でも配色や糸の扱いによって個性が表れることが語られています。形が似ていても受ける印象が違う時は、まず最も明るい色の位置を比べてみると、違いを言葉にしやすくなります。
同じ形でも印象が変わる、配色の比べ方
例えば、同じ花の輪郭を白で縁取った場合と、地の色に近い濃色で縁取った場合を頭の中で比べてみます。前者は輪郭に、後者は花びらの内側に視線が向くかもしれません。これは見方を試す想定例なので、実物で同じ効果が必ず出るという意味ではありません。
実際の二作品を比べるなら、「明るい色は中心か外側か」「地の色が見える範囲は広いか」の二点に絞ると整理できます。形も色も一度に違う作品では、印象の差を一つの原因に決めつけないことが大切です。まず共通する部分を見つけ、その周囲の色を比べます。
記録には「中心は明るい、外側は暗い、輪郭が目に留まる」のような短い言葉で十分です。作者の意図を代弁するのではなく、自分の視線が動いた順番を書くと、次に別の手まりを見た時にも比較の手掛かりになります。
写真や展示で迷わない、三段階の見方
準備するのは、工程説明のある写真か、解説付きの展示です。拡大できる写真なら細部を、展示なら許された範囲の立ち位置から全体を見ます。展示品を手に取ることを前提にせず、輪郭・一色・重なりの順に視線を動かします。
- 全体の輪郭を見る:色柄からいったん離れ、丸い面のどこに大きな模様が置かれているかを探します。
- 一色だけを追う:見分けやすい明るい色を選び、隣の模様へどう繰り返されているかを見ます。
- 糸の重なりを見る:色の境目や交差する部分へ目を移し、線の方向と表面の厚みを確かめます。
見終えたら、「青がきれい」から一歩進めて、「明るい糸が花の輪郭をつないで見える」のように一文で表してみてください。模様の正式名称や縫い方が分からなくても、自分がどこを見たか説明できれば、この鑑賞の目的は達成です。
全体写真と拡大写真、どちらを選ぶ?
知りたいことに合う写真を選ぶと、細部を拡大しても分からない、という行き詰まりを減らせます。一枚ですべてを判断しようとせず、全体の配置と一本一本の線を分けて調べましょう。
| 知りたいこと | 向いている資料 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 模様の配置 | 球全体の写真 | 中心と周囲の繰り返し |
| 糸の質感 | 細部の拡大写真 | 色の境目と重なり |
| 作る順番 | 説明付きの工程写真 | 地巻きから地割りへの変化 |
線が見つからない・幅が違う時の対処
完成写真で地割りの線が見つからない時は、模様の糸と基準の線を区別しにくいことが考えられます。そこで、完成品だけを拡大するより地割りの工程写真に戻る方法が役立ちます。装飾が増える前の球にどんな線があるかを確認し、完成写真ではその位置関係を想像するところまでにとどめます。
また、同じような花びらでも写真の端では細く見える場合があります。曲面を斜めから見た影響も考えられるため、幅だけで作りの良し悪しを決めないでください。別角度の写真があれば同じ部分を探し、なければ「この角度ではそう見える」と記録します。
糸の重なりがぼやけて見える場合は、画像の解像度や照明が原因かもしれません。拡大して新しい線が読み取れないなら、その画像から糸の本数を数えるのはやめましょう。確かめられる色の配置と、分からない縫い順を分けることも、作品を丁寧に見る方法です。
まずは工程写真で、二種類の糸を探してみよう
讃岐かがり手まりの整った模様は、丸い土台、位置を決める地割り、糸を重ねる仕事のつながりから生まれます。素材の説明を知ってから眺めると、色の美しさに加え、その色を支える線にも目が向きます。
次の一歩は、先に紹介した香川県の製造工程ページを開き、地巻き糸とかがり糸の使われる場面を一つずつ見つけることです。土台を包む段階と模様を置く段階を区別できたら、完成品をもう一度眺めてみてください。



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